かつて彼と別れた後、とてつもない情緒不安定に陥ったことがある。
あの時は他に落ち込む理由がいくつか重なったこともあり、本当に自分でも信じられないくらいのローな気分で、一種のショック状態だった。
電車の中や授業中に涙がこぼれてしまうこともあったし、食欲をなくして一気にげっそり痩せた。
彼との別れはある程度予測していたし、彼が言わなければ私が決めていたと思うので、それほど驚き悲しむことでもなかったにも関わらず、である。
これには自分でもびっくりした。
一度そういうことを経験したので、今後はもう何があってもあそこまで至ることはあるまいと強心臓の私は思うのだが。(そうそうあっては困る)
それはさておき、そんな経験のためか、私は華原朋美を心ひそかに見守ってきた。
彼女が失恋でおかしくなった時には本当に身につまされる思いではらはらしたものだ。
最近になって完全に吹っ切った様子で、私もハッピーな気分だ。
あんなことになっても彼女が芸能界に残ってこれたのは、もちろん彼女の努力もあるけど、私のように彼女に感情移入してしまった女性がたくさんいたということもあると思う。
経験に基づく歌ほど、人の心を動かすものはない。
大失恋の経験のある女には、彼女の歌の意味がわかるはずだ。
彼女の復活と彼女の歌は世の失恋女性たちの心の支えになってくれることだろう。
華原朋美の「As A Person」は未練たらたらな歌でまた涙を誘うものがあるが、マイ・ベスト・ハートブレイク・ソングは、カーリー・サイモンの「You're So Vain」(邦題:うつろな愛)である。
別れた男の背中に直接投げつけたような歌。
女はこうして強くなっていくのだ。
You're so vain,You probably
think this song is about you
You're so vain,I'll bet you
think this song is about you
Don't you? Don't you? Don't you?
ところで、「この男性は一体誰か?」という疑問に関して、彼女自身直接誰と言うことは明言を避けている(当然でしょう)。
ウォーレン・ビーティやミック・ジャガー、ジェームズ・テイラー(この曲のヒットの頃結婚しているから違うだろうけど……後に離婚)など名前は挙がっているものの、真相を知るのは、カーリーと相手の男性だけである。
歌われた側は相当びっくりしただろうけど、「いい気味」である。
「最高のラブソングは失恋した時に書けるもの」(by カーペンターズ「All you get from love is a love song」)というのは真実だと私は思う。
恋が終わって傷ついた時にこそ、人の心を動かすものが生まれてくるのだ。
ちなみに。
今、これを書くにあたってちょっと調べたら、竹内まりあの「元気を出して」がカーリー・サイモンのアルバム(離婚後発売。失恋ソング満載)がきっかけで書かれたものとわかった。
涙など見せない 強気なあなたを
そんなに悲しませた人は誰なの?
終わりを告げた恋に すがるのはやめにして
ふりだしから また始めればいい