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電話

随分長いこと同じ電話番号を使っている。
携帯を使いはじめた時から変えていない。
変更するといろんな人へのお知らせをしなきゃいけないし、長く連絡をとってない人でもいつでも連絡がつく状態にしておけるというメリットがあるから。

知らない電話番号から電話があった。
とりあえず出る。
「もしもし。久しぶりなんだけど、覚えてる?」
という男性の声。少々お酒が入っている様子で言葉が聞き取りにくい。
……誰?
「えーと?」
私の不審気な声に相手があわてて言った。
「あ、すみません。まちがえたみたいです」
「はあ」
そして、電話は切れた。

少しして、またかかってきた。
「あ、やっぱり間違いでした」
と言ってまた切れた。

あれぇ?
私が覚えてないだけで、知っている人?
もしかして、元カレだったりして?
(昔、酔うと電話をかけまくる人がいた、ということを思い出した。)
携帯の変遷の中で、関係の終わった人の番号は消去してしまっている。
確証はまったくない。

薄情な私は昔の恋人の声を覚えていない。
顔はたぶん見れば認識はできる、と思う。
だけど声までわかる自信はない。
忘れられない声の人もたまにはいるけど、それは私が好きな声のタイプだった場合で、特に声に愛着がなかった場合は記憶していない。(ゴメン)

逆に、私の付き合った人たちは(そんなにたくさんいるわけじゃないけど)、どれほど長く私の声を記憶していたんだろう。
私は自分の声は好きではないので、覚えておいてほしいとは思わないけど。

一つの恋が終わった後、その記憶や傷跡をある程度の時間をかけて洗い流す。
次の恋をするために。
その過程で、過去の恋は感触を失って、ただの記憶に変わる。
それは立体が平面に変わるようなもの。
声や匂いや手の温度などの生々しいものは鮮度を失いやすい。
逆に言えば、それが体に残っているうちは、次の恋に入るのは早いということ。
恋を失ったばかりの頃は絶対に忘れられないと思うのに、時間は必要のなくなったものをちゃんと忘れさせてくれるから偉大だ。

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