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 選曲委員会

 年に2回の定期演奏会のプログラムは、序曲(10分程度の曲)、サブメイン(15〜20分前後の曲)、メイン(交響曲)、アンコール(短くて比較的難易度の高くない曲)、の4曲で構成される。
 ある程度上達すればフル出場となる弦楽器と違い、管楽器と打楽器は大抵1曲に必要な人数よりも人員が多いため、全員が演奏会に出られるように1曲ずつ担当者を決めて演奏している。
 特に金管楽器と打楽器は、暇な人が増えたりフル出場者がいたり、プログラムによってまったく活気が違ってくる。例えるなら、弦楽器は生活を保障された正社員、木管楽器はある程度の出番が保障された契約社員、金管楽器は場合によっては首の危ない派遣社員、打楽器はすべて選曲次第のフリーター、といったところだ。(演奏会で出番が少ない場合のフリーターは、演奏会の合間にある新入生歓迎演奏会や文化祭などのイベントでの臨時バイトに精を出すのである。逆に人手が足りない時は他のパートの失業者にアルバイトを頼む。)
 もちろんプログラムによる完全失業者がでないよう曲の編成と人員のバランスは考慮されなければならず、不公平にならないように各パートから最低1人ずつ選曲委員を出して選曲のための会議が行われる。
 選曲委員は大抵2、3年生だが、それぞれのパートの事情により1年生や4年生が出てくることもある。
 一番発言力があるのは3年生で、その学年の特色や前回までのプログラムによりパートの意気込みや権力が違う。
 ブラームスの交響曲で出番の少なかった金管楽器が次の演奏会にチャイコフスキーの派手な曲を要求したり、難易度が高すぎると強硬に反対するパートがあったり、完全に個人的な趣味にこだわる人がいたり、といろいろな事情、物語があるわけである。
 ある時は「卒業までにどうしてもこの曲をやりたい」というあるパートの先輩が各パートの選曲委員に「お前もやりたいよな。選ぶよな」と凄み、「うちの先輩がああ言ってるから頼むよ」とそのパートの後輩が説得して回る、という裏での根回しがされることもあった。
 金管楽器VS木管楽器、弦楽器VS管楽器、などの戦いを見ることはたまにあったが、打楽器は他の楽器と利害が一致することもあまりなく、なんとか失業者を出さず、しかもお金がかかる上に練習もできないレンタル楽器を使わずに済めば尚良い、という方向性でいつも臨んでいたので、選曲で敵を作ることはない。その代わり、打楽器が最初に候補として挙げる曲は他のパートから不評であることが多く、同意を得られることはまったくと言っていいほどない。
 選曲委員会で各3〜5曲程度に絞った候補曲は後日初見で合奏を行った後で団員の希望をとり、多数決で決定する。





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