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 哀愁のメロディ

オーボエ
Oboe
【発音】o'ubou、【@】オーボー、オウボウ、【変化】《複》oboes、【分節】o・boe
【名】 オーボエ、オーボエ音栓、オーボエ奏者◆【略】Ob.


 チューニングの音が好き。
 そう言ったら、オーボエの澤田くんは「人の苦労も知らないで」と眉間に皺を作った。
 まあね。苦労はわかるよ。
 一番乗りで吹かなきゃいけないんだもんね。

 練習であれ本番であれ、合奏を前にして行われるチューニングは、一種の儀式だと思う。
 これから合わせますよ。準備はいいですか。
 そこにいる楽団員が一つにまとまるための、儀式。

 ペー、っていうオーボエの音からはじまり(そんなこと言ったらまた澤田くんの眉間の皺を深くするだけだから言わない)、コンサートミストレスの由紀先輩がそれを引き継いで、そこから弦、木管、金管、と音が広がっていく。
 たまには私もティンパニの皮を軽く震わせて参加してみる。(淋しがりやなので)

 そもそもあの愛嬌のある音色のオーボエがトップバッターに選ばれた理由は、最も音程の調整が難しい楽器でどうしても音がとれないのでそれに他の楽器が合わせてあげるしかなかったのだ、と誰かに聞いたことがある。
 そう考えてみると吹き方も、クラリネットやフルートと比べて、申し訳なさそうに吹いているように見えなくも無い。
 一見華やかそうなポジションでありながら、オーボエの人たちがどことなく控えめなのはそういう背景があるから?──なわけないか。
 真偽は定かではないが、オーボエ奏者は難しさのために禿げてしまう確率が高いとかで、オーボエの男性陣は内心それを恐れているらしい。
 フルートの女の子たちに、近頃生え際が……、とからかわれる澤田くんの姿を見ていると、難しさのためというよりは、いろいろと周りに気を遣いすぎるからではないか、と思う。

 オーボエというと一般的に有名なのはチャルメラの音色だけど、ああいうもの悲しい、泣き笑いしてるみたいな感じがオーボエにはよく似合う。


photo:
オーボエ オーボア





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